高級財布を拾った時の話

スポンサーリンク

人気のないところで

1ヶ月ほど前の23時頃のことだ。

人気のないところで高級財布の落とし物を発見した。

その時の僕は、Uber Eatsの配達中に赤チャリ(ドコモ・バイクシェアの電動自転車のこと)のバッテリー残量が少なくなってしまったので、別の自転車に乗り換えようとしていた。

サイクルポート(赤チャリが置いてある場所)に着き、バッテリー残量がある自転車を探していると、1台の赤チャリのカゴの中に何か入っているのが見えた。

なんとそれは、COACHの黒い財布だった。

恐る恐る手にとってみると、ズシリと重い。

周りを見渡すと、誰もいない・・・。

心拍数が一気に上がった。

当時の状況

その時の僕はかなりお金に困っていて、カードローン3社の借金の返済をそれぞれ2ヶ月分ずつ滞納してしまっていた。

三井住友銀行カードローンからは催告書が届き、今月払えなければ一括払いをしろ、ということが書いてあった。

エポスカードからは、電話で少しきつめの口調で、「今月払えなければ法的措置を取ります」とまで言われてしまっていた。

さらに、家賃の支払いも迫っているし、スマホの通信費も滞納中。

とにかく、この局面を乗り切れなければ、債務整理待ったなしの状況だった。

そんな僕に、残酷なまでの2択が迫られていた。

この財布を交番に届けるか、届けずにお金を抜いてしまうか・・・。

言い訳

財布の中はまだ見ていないが、重いのでそれなりにお金は入っているようだ。

そういや、COACHの高級財布って、売ったらいくらくらいになるんだろう・・・。

このまま置いておくとたぶん誰かが持って行っちゃうだろうな・・・。

なら、ちょっと預かっておくかな・・・。

そうだな、預かっておくだけ、預かっておくだけ・・・。

迷った末に、僕はその財布を配達用バッグの中にサッと放り込み、その場を去った。

自転車のペダルが、いつもより重く感じた。

財布の中身

少ししてから、人がいなさそうな小道に入って、財布の中身を確認した。

合計、約1万2000円。

1000円札が7枚と、5000円札が1枚。

小銭も数百円程度入っていた。

特にカード類がたくさん入っていて、財布が重かったのはそのせいだった。

再び自転車を漕ぎながら、どうすべきか考えることにした。

交番に届けるのなら早くしたほうがいい。

遅れれば遅れるだけ、なぜ届けるのが遅れたのか警察官に怪しまれるだろう。

例えば、僕が財布を発見する以前に既に発見者がいて、その財布からある程度のお金を抜いていたとしたら?

財布を届けたのは僕なのに、容疑者にされてしまうかもしれない。

さらに、その時の僕にはとにかくお金がなかったので、1万2000円は普通の人の12万円くらいの価値があるといっても過言ではなかった。

これは、そんな僕に訪れたチャンスなのだろうか。

債務整理待ったなしの僕に、神様がくれたプレゼントなのでは、と思えてきた。

葛藤

1万2000円を抜いて、それ以外は元の場所に戻そう。

それなりに悪い人なら、お金を抜いた挙げ句に、カード類を全て処分し、高級財布は売ってしまうだろう。

けど、それだと財布を落とした人は困ってしまうな。

運転免許証やクレジットカード、各種ポイントカードの再発行など、考えただけで大変だ。

僕はそこまで悪人じゃないから、1万2000円だけ抜いて、財布は元の場所に戻そう。

できればお金もそのまま返してあげたいけど、僕はとにかくお金に困っているのだ。

だから、財布を落とした人には1万2000円は諦めてもらおう・・・。

けど、バレたら捕まってしまうだろう。

こんなことで捕まりたくない。

もう二度と、留置場には入りたくない。

・・・そんなことを、2時間くらい考えていた。

出された答え

幸いなことに、その間、Uber Eatsの注文はほとんど入らなかった。

財布を交番に届けるか、届けずにお金を抜いてしまうか。

2時間で僕の心の中にいる天使と悪魔は何ターンも戦い、疲れ切っているようだった。

そろそろ、答えを出さなければいけない。

その時の僕にとっては1万2000円は大金で、債務整理の一歩手前まで来ていた。

もしかしたら、この1万2000円がきっかけで明暗が分かれるかもしれない。

後に債務整理することになってしまって、「あの時の1万2000円があれば・・・」なんて嘆くようなことになる可能性もゼロではない。

正直、めっちゃ迷った。

もし財布からお金を抜いて、そのまま財布を元の場所に戻して、誰にもバレなかったとしても、その代わりに、僕は一生消せないものを背負ってしまうような気がした。

もちろん今までの人生でたくさんの間違いをしてきたけど、これからの人生では、自分が正しいと思えることをしていきたい。

また、僕は宗教に興味ないし神も信じてはいないけど、何かに試されているような感じがした。

そして、ここが僕の中で、人生における大きな分岐点になるような気がした。

なので、勇気を出して、拾った財布を交番に届けることにした。

得たもの

こうして僕は、目先の利益よりも、小さなプライドを守ることを選んだ。

全くの偶然だとは思うけど、なぜかお金がない時に限って、こんなことが起こる。

今までの人生で、高級財布を拾ったことなんてなかった。

なのに、債務整理がすぐそこに迫っている状況で、こんなことが起こった。

まさに善悪の葛藤というか、自分の欲との闘いでもあった。

でも、何とかそれに打ち勝ち、一銭にもならなかったけど、自分にとって大きな自信を持つことができるようになれた気がした。

僕はスカウトマンをしていた時に逮捕されてからというもの、実は自分はヤバい奴なのではないか?と少し疑心暗鬼になっていた。

けど、今回の件で、自分の良心を再び信じることができるような気がした。

けど、だからといって僕は完全なる善人ではないだろう。

本当の善人なら、拾ってすぐ届けるはずだから。

おまけ

おまけとして、交番での様子を書いておく。

交番では、以下のようなことを確認された。

  • 財布を拾った場所と時間
  • 財布の中の金額
  • 権利を放棄するか?
  • 見返りを希望するか?
  • 連絡先を教えるか?

「財布を拾った場所と時間」は口頭で伝えた。

財布の中身は紙幣と硬貨の確認のみで、カード類の確認はしなかった。

印刷された紙に「権利を放棄する・しない」「見返りを希望する・しない」「連絡先を教える・教えない」で希望するほうを選択していく。

僕は面倒くさかったので、「権利放棄」「見返り希望なし」「連絡先を教えない」にした。

最後に署名をして、所要時間は約5分ほどだった。