現役コンビニ店員が『コンビニ人間』を読んだ感想

ブックスタンドに載せた『コンビニ人間』書評

最近は、クラウドソーシングでフリーランサーとして働くことを目指し、このブログの更新や読書をする時間を削り、Webデザイン学習をしている。

特に読書は、Webデザインやブログに関する本、どうしても読みたい自己啓発書しか当分は読まないことにしていた。

しかし、『コンビニ人間』(以下、本書)だけは小説だが、どうしても今の時期に読んでおきたかった。

なぜなら、現役のコンビニ店員である今でしか、感じることができないものがあると思ったからだ。

今働いているコンビニエンスストアは3月末で辞めることになっている。
「コンビニ店員として」か、「コンビニ店員ではない人として」では、本書を読んで受け取るものは違うかもしれない。

その前提を基に、現役コンビニ店員として書評を書いてみた。

この記事には、『コンビニ人間』のネタバレも書いてあります。
ここから先はご理解の上で、読み進めてください。
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あらすじ

主人公の古倉恵子は36歳で、大学一年生の時から18年間、同じコンビニエンスストアでアルバイトをしている。

今までに他の仕事をしたこともなければ、誰かと付き合ったこともないし、もちろん未婚だ。

幼い頃から、自分が周りとは違う人間だということには気付いていたものの、家族を悲しませないために、なるべく「普通」に生きていた。

そんな恵子が世の中から異物として扱われず、正常に存在していくことができるのが、コンビニ店員として生きていくことだった。

コンビニのマニュアル通りに存在していれば、誰にも文句は言われないからだ。

ある日、働いているコンビニで恵子とはまた違った「普通ではない」男、白羽が働き始める。

コンビニ店員としての生活を18年間続けてきた恵子だが、白羽に影響され、人間としての「普通」を意識し始める。

感想

古倉恵子という人間について

本書は「私」、つまり主人公である古倉恵子の主観で物語が進んでいく。

よって、恵子の視点からの世界を体験できるので面白い。

物語自体も実にあっさりと進んでいき、サクサク読み進めることができる。

幼い頃の恵子は、公園で死んだ小鳥を家に持ち帰って焼き鳥にして食べよう、と言ったり、けんかしている男子を止めるためにスコップで頭を殴ったりと、親や教師を困らせてきてしまった。

過去のエピソードから、恵子はサイコパスや、アスペルガー障害のようだと言えなくもないが、本書には明示的には書かれていないため、ただの「変わった人」で済ますこともできる。

要は論理的に考えすぎてしまうというか、世間一般的な道徳観だとか、忖度ができなかったりする種類の人間なのだ。

人として誤ったこともしていなければ、犯罪も犯してはいない。

しかし、以下の部分は少し恐かったが。笑

 赤ん坊が泣き始めている。妹が慌ててあやして静かにさせようとしている。
 テーブルの上の、ケーキを半分にする時に使った小さなナイフを見ながら、静かにさせるだけでいいならとても簡単なのに、大変だなあと思った。妹は懸命に赤ん坊を抱きしめている。私はそれを見ながら、ケーキのクリームがついた唇を拭った。

55ページより

普通とは何か?

恵子は自分がマイノリティーに分類される人間であることに、そこまで苦しんではいないように見える。

本来なら日常生活にも異常をきたしてしまうのだが、「コンビニ店員」という人間としてのマニュアルを通して、「普通」に生きてこれたからだ。

では、「普通」とは何なのか?というと、本質的なことは縄文時代から変わっておらず、
働いてお金を稼ぐか、結婚して子供を産むことであるという。

本書には白羽の義理の妹や、恵子の友人など、いわゆる「普通」の人達が出てくるが、彼ら・彼女らの存在と発言がフィクションだとわかっていても読んでいてイラついてしまった。

現実ではもっとオブラートに包んで指摘などはされると思うので、そこは少し誇張されているように思う。

白羽も、人としてものすごく歪んでいるが、恵子と比べると「普通」に近いといえる。

実際、恵子の妹が家に来た時も、急に饒舌になり恵子との関係をフォローしている。

 妹は、白羽さんの言っている意味を反芻するようにしばらく彼の顔を見つめ続けたあと、まるで教会で神父さんに出会った信者みたいな顔で、白羽さんに縋るように立ち上がった。

124ページより

必ずしも変わることがいいことではない

本書を読む前の予想では、「空虚な人生を歩んでいる干物女が、ある日同世代のコンビニ店員と恋をしてそこから人生や価値観が変わっていく」みたいなドラマでありそうな内容だと思っていた。

だから、いい意味で期待を裏切られた気がする。

ネタバレすると、最初と最後で恵子はそこまで変わらない。

世間的には白羽と恋をして、男女の関係になって、結婚を前提に同棲をして、コンビニでのアルバイトを辞めて、就活をしているように見えるが、全く違う。

最終的に、恵子は自分のために就活をさせる白羽に反抗し、またコンビニバイトに戻ろうと決意するのだ。

「一緒には行けません。私はコンビニ店員という動物なんです。その本能を裏切ることはできません」

150ページより

なぜコンビニ店員なのか?

恵子にとっては、人間としてのマニュアルがあり、それに従って働いていれば正常だと受け入れられるコンビニ店員がしっくりきたんだと思う。

そんなにコンビニで働くのが好きなら正社員になればいいのに、と思ってしまうが、それだとダメなんだと思う。

あくまで、アルバイトとしてのコンビニ店員で、正社員だとアルバイトの教育だとか、店のことなど不確定要素がありすぎるのだろう。

他に思いついたのは工場での勤務だが、それだと社会との接点が少なくなってしまうため、合っていないのだと思う。

 なぜコンビニエンスストアでないといけないのか、普通の就職先ではだめなのか、私にもわからなかった。ただ、完璧なマニュアルがあって、「店員」になることはできても、マニュアルの外ではどうすれば普通の人間になれるのか、やはりさっぱりわからないままなのだった。

21ページより

女性が社会から求められているもの

読んでいて、特に女性は「世間体」だとか「求められているもの」が多くて大変だと思った。

例えば、女子アナや、アイドルや、風俗嬢などの職業は、あるべきイメージというものが最初からあって、その枠に無理矢理納まっているように見えなくもない。

個性というのは許されても、やはり大枠からはみ出てしまうと、すぐに「修正」されるか、「削除」されてしまうからだ。

現役コンビニ店員として

どうやら著者の村田沙耶香さんは、セブンイレブンの店員をしていて、本書を書いたそうだ。

だからか、コンビニあるある、というよりセブンイレブンあるあるがたくさんあった。

俺が働いているのもセブンイレブンなので、より感情移入できたのかもしれない。

毎日の朝礼で言う「誓いのことば」と「接客六大用語」は、俺も白羽のように「宗教みたいだ」と思った。

しかし、別にセブンイレブンに限らず、今まで働いた飲食店では、朝礼でなぞの唱和をすることが多いから慣れてはいる。

俺のバイトしているコンビニでは、いろんな年齢層の人達が働いている。学生、フリーター、主婦、会社員・・・。

しかし、「コンビニ人間」なのはオーナーだけな気がする。

いや、オーナーさえもコンビニ人間とは言えないだろう。確かに週7で毎日12時間以上働いているが、コンビニが全て、というようには見えない。

そして俺は、当初はこのブログに注力するために、家からチャリで4分ほどのコンビニでアルバイトすることを選んだ。

現在は軌道修正をして、ブログではなくクラウドソーシングでフリーランサーとして働き生活を安定させた後に、プロブロガーを目指そうとしている。

しかし、世間的には28歳のフリーターだ。

客からしたら「底辺だ」と思われているのかもしれない。

本書を読み終わってから、バイト先のコンビニで「コンビニ人間」のように振舞って仕事をすると楽しいことに気付いた。

空いた時間には商品のフェイスアップや、足りない備品の補充など、休みなく働いていた方が、レジ横でおしゃべりしていたり休憩したりするより充実しているし、時間が早く過ぎる。

幸いなことに俺は、本書の主人公である恵子のように世間一般でいう「普通」がわからないような人間ではないし、コンビニ以外でも働いていくことができる。

世間体を気にして生きていきたくはない。

もちろんTPOによって多少は顔や話し方は変えるだろうけど。

だからこそ、このブログには、これまでにしてきたことや、これからのことについて嘘偽りなく書いていこうと思った。

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