宇佐美典也さんの『逃げられない世代 日本型「先送り」システムの限界』を読んだので、内容をまとめてみた。
最初読んだときは内容がうまく入ってこなかったため、全部で2回読んだ。
2回目でやっと内容が頭に入ってきたので、これを自分なりにアウトプットしてみる。
読もうと思ったきっかけ
以下のブログの記事を読んで、実際に読みたくなった。
宇佐美典也さんの『逃げられない世代』は、20代〜30代の人がこれからの人生を考える上で一度は読んでおきたい本
ちきりんの『自分のアタマで考えよう』を読んだこともあり、これからはこのブログにおいても、日常生活においても「考える」クセをつけようと思った。
そのための土台として、本書がいいインプットになると思い、近所の図書館で予約してみたところ、意外にもすぐに順番が回ってきた。
著者はどんな人か?
著者の宇佐美典也さんは1981年生まれの元経済産業省の官僚で、現在はフリーランスとして活動している。
青雲の志で入省したものの、自分ひとりの力では決して改革をすることはできないことを痛感し、7年半で経済産業省を退職した。
東大出身の頭の良さと、柔軟な思考、そして実際のデータをもとにした考察が本書の中でなされている。
また、「おわりに」で日本という国をモーニング娘。に例えているのがわかりやすく、人間味も感じられてよかった。
どんな本か?
「はじめに」において本書の特徴が書いてあるので、そのまま引用させていただく。
「現在40歳以下のポスト団塊ジュニア世代以降の社会人が、今後我が国でどのような社会的な使命を担うことになるのか」という一貫した問題意識に基づいて、日本の社会が抱えている問題についてまとめられている。
逃げられない世代とは?
本のタイトルにもなっている「逃げられない世代」とはどんな世代のことを指しているのか?
これも、本書をそのまま引用させていただく。
本書のいう「逃げられない世代」とはこうした人口構造や国際的な日本のポジションの変質にあわせて、日本という国を再定義していく役割を担う団塊ジュニア以降の世代のことを指します。
具体的には、現在20代から30代の世代(1979~98年生まれの世代)で、この世代は自らの身を削りながら団塊ジュニア世代の老後を20年間支えていき、他方で次世代に問題を先送りしない社会保障システムを再構築し、なおかつ日本の安全保障のあり方も外交的に見直していく必要に迫られることになります。
団塊の世代(1947~49年生まれ)より前の世代は団塊世代に、団塊の世代は団塊ジュニア世代(1971~74年生まれ)に、問題を先送りすることができた。
しかし、団塊ジュニア世代以降の世代は少子高齢化により問題を受け止めきれる人口の塊がなくなってしまうため、問題を先送りすることができない。
つまり、「逃げられない世代」とは、「先送りできない世代」と言い換えることもできるだろう。
俺も平成生まれなので、まさに逃げられない世代に属していることになる。
なぜ日本は先送りをしてしまうのか?
世界を見渡してみると、アメリカのトランプ大統領による保護主義、中国の台頭、米中関係、イスラム国、領土問題などなど、頭を悩ます問題は山積している。
しかしそれ以上に、日本国内に目を向ければ、財政破綻、少子高齢化、年金問題、移民問題、原発の再稼働など、決して目を背けてはならない問題がたくさんある。
しかし、現在の日本ではそのほとんどの問題に対し、「先送り」がされてしまっている。
誰も、好き好んで先送りをしているわけではない。
どうしても、先送りをしなければならない理由があり、結果として先送りとなってしまうのだ。
・・・まあ、当たり前のことだが。笑
その理由というのが、日本政治に強固に埋め込まれた先送り構造のせいだというのが、著者の主張である。
具体的には、以下の通り。
- 衆議院議員の任期が平均3年くらいのため、選挙を意識した政策しか実行できない
- 官僚は1~3年でポストを異動しなければならないため、大局的な改革がしにくい
- 与党内部で法案をギチギチに決めてしまうため、野党は与党のスキャンダルなど刹那的な批判をするしかなくなる
このように、日本はあらゆる問題を解決する場である国会自体が先送り体質になってしまっているため、結果としてそれぞれの問題が先送りさせてしまっている。
では、どうすればいいか?
そのためには、抜本的な改革が必要だが、それ自体も先送りされてしまうため、もはや無限ループのようになってしまっているのではないか。
俺も政治についてはよく分からないしそれほど興味があるわけではないので偉そうなことは書けないのだが、今の日本は消去法で自民党を選んでいるような気がする。
ほとんどの人が、安倍晋三首相率いる自民党が日本にとってベストだとは思っていなく、民主党も共産党でもないから、ベターな政党として自民党を選んでいる気がするのだ。
だから、日本にとって痛みを伴う抜本的な改革をするためには、自民党に代わる新しい政党を待つしかないだろう。
政治なんて典型的な「おっさん社会」なのだから、このまま自民党が与党のままでは、今の新人議員が将来的におっさん議員になって結局あまり変わらないような。
しかし、小泉進次郎さんには少し期待している自分もいる。
社会保障の先送り
申し訳ないが、ここまで書いてきて疲れてきてしまった。笑
本書の内容が濃すぎるので、重要な部分がたくさんあり、引用をするとキリがない。
要は、俺がまだ本で読んだ知識を自分のこととして考えることができていないからだと思う。
結論を書くと、「今のまま先送りをすることはあと20年くらいはできる」ということだ。
この20年くらいの猶予があるうちに、日本は内外において対策をしなければならない。
本書を読めばわかるが、消費税は将来的には20%まで上げないといけないし、国債の利払い費が増えないようにしばらくは低金利が続くし、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による年金積立金の運用のために株高も続くだろう、ということがわかる。
もちろん、「政府がそうしたい」というだけの話なので、実際はどうなるかわからないが、財政破綻を防ぐためにも、そのような流れは今後も続くだろう。
安全保障の先送り
社会保障と同じく重要な問題として、安全保障での先送り構造についても説明している。
また、日本が太平洋戦争をすることになった理由などが詳細に書かれている。
とくに印象に残ったのが以下の部分。
中国海軍との予算の差や世界中からテクノロジーをかき集める貪欲な姿勢を考えると、仮に憲法9条を大幅に改正して自衛隊の制約を解き放ったところで、近い将来日本が軍事的に中国海軍の海洋進出に対抗できなくなることは目に見えています。したがって、このような状況下で我々が考えなければいけないことは、将来にわたって唯一中国を抑え込む力を持つアメリカに「どのように日本を見捨てさせないか」ということになります。
中国がいずれ世界一の大国になるのは時間の問題で、その中国に唯一対抗できるのはアメリカだけになる。
そのためアメリカに日本を守り続けてもらうには、日本を「守る価値がある国」と思ってもらう必要がある。
しかし著者は、「守らないとヤバい」と思わせる必要があると主張している。
具体的には、「核兵器をいつでも作れる国」と思わせること。
ちなみにこれは核兵器を作るのではなく、原発を稼働させることによって核兵器にも技術を転用できることを暗に示す目的がある。
俺は実は、ライトな原発反対派なのだが、『逃げられない世代』を読んで、原発再稼働のメリットがこんなところにもあるのだと驚いた。
しかし、原発自体も核廃棄物を残すという意味では「先送りの技術」であると思う。
まとめ
このブログ(タカシブログ)では書評をけっこうしてきたのだが、まだ自分の言葉でアウトプットする能力はついていないように思う。
前回は『自分のアタマで考えよう』、そして今回は『逃げられない世代』を読んでみたが、まだまだ考える能力がついておらず、とくに1周本を読んだだけでは内容をまとめることができない。
「先送り」してしまうのは日本だけではない。
俺も借金300万円を、毎月ほぼ金利のみを払いながら生きている。
「金利が払えるうちはいい」「将来的に返済すればいいのだから」と、安易にものを考えているが、具体的なビジョンや計画性がないと、結局は将来に待っている問題を先送りしているにすぎない。
俺の場合は、このままのペースでいったとしても何十年かすれば300万円の借金全て返済することはできるだろう(もちろん俺の中ではブログを収益化させ、2年以内には返済するつもり)。
しかし日本の場合は、社会保障を支える側の人数が減っていき、反対に支えられる側の人数が増えていっているため、このまま現状維持はできない。
日本政府の国債を国内の機関が買っている今はなんとかなっているが、2037年頃には外国金融機関に頼らないといけなくなり、財政破綻する可能性が高くなってしまう。
で、この本を読んだからといって、今の俺にできることは限られている。
まず、物事をもっとマクロな視点から見て、自分なりに整理することだ。
情報過多の現在においては、情報は右から左に流れていき、何が重要かもわからず、スナック菓子のようになんとなく情報をつまみ食いしがちだと思う。
大枠での知識が得られたら、今度はミクロな視点として情報を細分化して自分なりの思考をしていくべきなんじゃないだろうか?
とりあえず、残り20年弱を指をくわえて政治家に任せているのではなく、もっと法律や金融や歴史などを学び、自分なりに整理していこう。
その上で、例えば政府が株高を望んでいて、そのためにいろんな施策をしていることがわかっていれば戦略的に投資をすることにもつながるだろう。